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zoom RSS 一阿の 「問わず語り」8 (最終章)

<<   作成日時 : 2015/09/29 07:00   >>

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第一章で、降る雪や/明治は遠く/なりにけり(草田男) をあげ、昭和20年8月15日以前と以後では、いふにいはれぬ違ひがあると申しました。そして「問わず語り2」で、桶谷秀昭さんの「昭和精神史」の一読をお勧めしました。

日本は理屈の国ではなく、問わず語りの国です。戦前と戦後では、古木を斬ったときの年輪のやうな不思議な差があります。以下は「昭和精神史」の最後の頁です。


「 ・・・・生活の場は焼け跡の廃墟に建てられた掘立小屋であった。空腹をかかへ、乞食のやうな身なりの日本人が、進駐米軍兵士が惜し気もなく路上に捨てた煙草を拾って吸った。あちこちの闇市に人はむらがって、不潔な食べ物にむさぼりつき、あやしげなアルコオルに渇をいやした。

粗悪な用紙に米語と日本語を併列して印刷した手帳のやうな米会話本が飛ぶやうに売れた。中学校は再開されたが教科書がなかった。やむなく戦前の教科書の占領政策に都合のわるい部分を墨で塗り潰したのを使った。それを怠った学校があれば、CIE(Civil・Information・and・Educatin・section/一阿注.)から憲兵を連れて視察にきた米人調査官から、叱責と廃校を暗示する威嚇を浴びた。

米軍兵士がもたらしたアメリカ文明の物質的ゆたかさが、日本人大衆を幻惑した。占領のはじまった頃、日本人婦女子の性的防波堤に殉ずる悲壮な米軍兵士相手の淫売婦が募集されたが、やがてその悲壮感は消えて、パンパンといふ名の日本婦人が、米兵士の腕にぶら下がって嬉々として街を歩く風景がみられるやうになった。

「アメリカ軍とパンパンは日本から出てゆけ。」 といふビラが、革命の前衛を自負する政党によって電柱に貼られた。パンパンは日本人である。「人種的同胞感覚」 を欠落した残酷が感じられる。「みんな濁流に押し流されてゐる。」 と 河上徹太郎は 『1946年』(「新潮」昭和21年11月号) に書いてゐる。「然し、汚濁は語るに適しない。といふのは、不愉快だからでも、無価値だからでもない。それは無限定だからである。全く悪夢の如き歳月である。」

しかし、精神的廃墟と汚濁の地下に悲しみだけが流れてゐた。それをこの年の12月に発表された小林秀雄の『モーツァルト』に見る。瞬時にあらはれては迅速に消えてゆく言葉にならぬ悲しみ、朝焼けの流れゆく雲に明滅するおそろしく透明な永訣の感情。《一阿は二十歳のころ、このど真ん中に住んでゐたので、いちいち身につき刺さる。》

すでにいったやうに11月に日本国新憲法が公布された。非武装を宣言し、絶対平和を世界に懇願する米文和訳憲法である。明治憲法は消滅し、 極東において十九世紀末に最初に創建されたアジアの草花の匂ひのする近代国家は完全に崩壊、消滅したのである。 そして平安朝以来の歴史をもつ国語体系の破壊をもたらす現代かなづかひが制定された。

さらに翌12月には米国式6・3・3 制の新学制が予告された。この決定的な事態にたいして注目すべき反応はなにひとつ起らなかった。あの悲しみにくらべればそれは何事でもなかった。いはんや汚濁と精神的廃墟にとってをや。八月十五日以降に生き長らへた者に、さらに決定的な別れの時が、すでに過てゐたのかもしれない。

夜来の颱風にひとりはぐれた白い雲が/気のとほくなるほど澄みに澄んだ/かぐはしい大気の空をながれてゆく/太陽の燃えかがやく野の景観に/それがおほきく落すしずかな翳は/・・・・・さよなら・・・・・さやうなら・・・・・/・・・・・さよなら・・・・・さやうなら・・・・・/いちいちさう頷く眼差のやうに/一筋ひろがる街道をよこぎり/あざやかな暗緑の水田の面を移り/ちひさく動く行人をおひ越して/しづかにしづかに村落の屋根屋根や/樹上にかげり/・・・・・さよなら・・・・・さやうなら・・・・・/・・・・・さよなら・・・・・さやうなら・・・・・/ずっとこの会釈をつづけながら/やがて優しくわが視野から遠ざかる。 (伊藤静雄「夏の終り」)

この詩が発表されたのは昭和21年8月、敗戦より1年目の夏であった。」


わたし(一阿)は「問わず語り」の1から7で、今の日本の国に対して抱えてゐる心配を綴りました。それはわが国の進歩的知識人や市民と称するサヨクな人達或はマスメディアが、平和に馴れて、自国を護る安保法制にたいしてさへ、戦争・戦争と騒いでゐる実態を目にするからです。

桶谷氏は「絶対平和を世界に懇願する米語和訳の憲法」と書きました。野党はこの憲法を盾に安倍潰しにやっきです。「昭和精神史」には「平安朝以来の歴史をもつわが国の国語体系の破滅をもたらす現代かなづかひ」とあります。新憲法の制定とよく似た粗雑な方法で決まった現代かなづかひ公布の実態は、阿川弘之と那珂太郎の対談で書きました。

あまつさえ、在日韓国人が国籍や名前を変へ、或は一代前は在日であった国会議員が野党の名のもとに反日亡国の論を為す現状は敗戦直後と何ら変っていません。大正の末期に生をうけ、戦前と戦争と戦後、そして平成を経験した私は、紛れもなく、祖国の嘆きが体感として身体の底に流れてゐます。本や人の話ではありません。戦前は良かった。本当に良かった。決して軍国ではありません。

小学生のころ叔父がクラリネットを祖父に買ってもらってボレロ(1928作)を練習してゐました。いい曲だなあと子供のこころで思ひました。マスコミによればそんな外国かぶれの者は憲兵にしょっぴかれることになってゐます。スケートの真生ちゃんが世界大会で滑るあのトーランドットも小学生のころ(昭和13)箱型ラジオで聞いたことを思ひだします。あの歌劇の文句を真似して家のものを笑はせた思い出があるからです。

戦前は軍国主義でギスギスしていたなんて大嘘です。昔の日本は豊で静かで温かかった。国家は命がけで国民を守ったし国民は国家を心から尊敬した。何よりも国民の心、国家の中心にはしっかりした心棒がとおってゐました。それが今では民主党や野党は言うにおよばず自民党でさへサヨク的な言動をなす人がゐます。靖国神社の新社屋分離を画策してみたり(極東裁判史観に毒され)、女帝と女系の差さえ知らない首相がゐたり嘆かわしいかぎりです。

もっとも、保守の源流のやうに言はれる吉田 茂 でさへ戦前はリベラルに位置した外務官僚だったのですから。GHQがちゃんとした保守の政治家を容認するわけはありません。それでも彼は世を去る前に自分の唯一の失敗は自国防衛の軍隊をつくらなかったことだと言ってゐます。これは海上幕僚長をしてゐた故吉田学氏から直接聞いたので間違ひはありません。

「昭和精神史」には更に「・・・翌12月には米国式6・3・3制の新学制が予告された。」とあります。これが如何にわが国の教育に弊害を及ぼしたかは昨今マスコミで騒がれてゐる事象を見ればよくわかります。先祖が考え抜いて作った徳川時代の寺子屋、明治維新以降日本人が自ら考へた6・5・3制。 戦争に負けたと言う理由だけで何故変へねばならんのだ。と言ひたくなります。国家、呆然自失のうちに最も大切なことが次々に変わってゆきました。憲法・ 言葉(新かなつかひ)・ 教育(6・3・3制)。「この決定的な事態にたいして注目すべき反応はなにひとつ起こらなかった。あの悲しみにくらべればそれらは何事でもなかった。(8月15日)」

今、新しい政治家が出て、本来の自然な日本人の国にもどさうと呼びかけると、過半数の日本人と称する市民達が絶叫する。まるで進駐軍のやうに。「憲法を守れ!」 「教育制度改悪反対!」 「軍国主義反対!」 世の中は、たいてい目に見えることより目に見えないことの方が怖いものです。マスコミは馬鹿らしいですが馬鹿にできません。それは目に見えないからです。

マスコミのおかげで、今や共産党が音頭をとって安倍おろしの狼煙をあげるまでになりました。喜んで応ずる政党もあれば、安倍はおろしたいがそれは・・と風見鶏を決め込む政党もあります。ただ、共産党が一頃の十倍にまで勢力を伸し政界に音頭をとるまでになったことを忘れてはなりません。彼等の最終目標は「天皇制廃止」なのです。早くあの富安風生の句のやうな・・・

よろこべば/しきりに落つる/木の実かな

の明るく楽しい国になって欲しいものです。


― おわり ―


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